暁月 あきら
集英社 (2016-06-03)
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症年症女 1巻 感想です。
少年が少女に馬乗りになってハサミで刺しているというショッキングな場面から物語は始まった。この物語の主人公とヒロインは名前が終始不明なままで「少年」と「少女」と表されている。
少年の目に映る世界は人の顔など個性を表すものがインクで黒塗りにされていて、少年は無個性な他人を識別することが一切できなかった。

これは比喩表現ではなく、なんと少年は人の個性が見えなくなり12歳で必ず死亡してしまう奇病にかかっていたのだった。
唐突な余命宣言に普通なら絶望する場面だけど、この少年は個性というものに憧れていてこの悲劇の主人公である状況を心から喜んでいた。

自分が死んだら病名に自分の名前が付くかもとさえ思っていた。ところがこの病気には先例があって少年よりも年上の少女も同じ病気にかかっていた。少女視界は布などパッチワークに包まれている。
年上な以上、早く12歳に到達して先に死亡して少年はただの奇病の2例目となり個性が薄まってしまう。

少年はこの事態にこそショックを受け、少女を殺すことで自分が先に病気を死ぬことを決意したのだった。

個性的な少年が個性的な少女を殺そうとする物語。少年はひねくれていているけど、少女は天才少女で良い子。少年が裏しかないのに対し、少女は表しかないと表現すればいいのかな。
そして強烈な殺意を持っている少年はどうにかして少女を殺そうとするが、何かと理由をつけて断念したり失敗言い訳したりするところが微笑ましくも感じたw
病気によって見下されたり同情されたりすることを何より喜ぶ少年の変わった感性も面白い。
少女を殺す方法を探していると、無個性なモブの中でもわかりやすい雰囲気のキャラが登場。通称ドク。

ドクは死ぬまでに1年以上かかる少年に同情して楽に死ねる薬をこっそりと処方した。少年はこれで少女を殺そうとコーヒーに混ぜて渡した。しかし少女はコーヒーを吐き出し暗殺ならず。
そもそも少女は苦い飲み物を飲めず、少年もそのことを予め知っていて、無意識化に暗殺を拒んでいたのだった。

そしてドクは「
毒」であり少年が少女を殺すことを期待していた。どうやら研究者チームも何か思惑があるらしい。
有能と思われる毒は少年の暗殺失敗をケアレスミスと言っていたが、実際はそうではないからそこまでは見抜けていない模様。秘密の連絡も少年にこっそり聞かれてしまっているし。

西尾維新らしい奇抜なキャラクターの言動が面白くて、長期連載的な意味でどういう方向性の物語になるのか楽しみな作品だった。雰囲気としては少女不十分に近い感じがする。
個人的な評価★★★★☆
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