西尾 維新 VOFAN
講談社
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業物語 感想です。
愚物語に引き続き番外編の第零話で、今回の主役は忍、火憐、羽川の3人。
第零話 あせろらボナペディ
忍がキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードという名前になる前のアセロラ姫という高貴なお姫様だった頃の物語だった。
キスショットという名前も吸血鬼になった時に付けられた名前だったんだね。
過去の物語で語られた通り人間であったアセロラ姫はうつくし姫と呼ばれ、その美しさの威光により見たものは自殺してしまうという特異体質を持っていた。これには魔女の呪いで内面の美しさが視覚化されたという事情もあったけど、それでも特異体質だ。
国をも滅亡させるその美しさを克服するために旅に出たアセロラ姫は、その噂を聞きつけた決死にして必死にして万死の吸血鬼、
デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスターの食料として目を付けられたのだった。
彼女が後に忍を眷属の吸血鬼にした自然発生の吸血鬼だった。この二人の奇妙な同居生活が今回の物語。
吸血鬼とは言えアセロラ姫の美しさの効果はあって、アセロラ姫を食べようとしたスーサイドマスターは美しいものを傷付けようとした罪意識により何度も自殺しては再生していた。
だからその美しさを緩和してから食べようと決め、アセロラ姫もこの症状がなくなるのならと利害が一致したのだった。
アセロラ姫を何とか食べられるようにデチューンしようとするスーサイドマスターの献身的な行動が面白かった。食料と捕食主という関係なのにねw アセロラ姫が自ら眼球を抉って美しさを捨てようとしたのを本気で止めるし。
アセロラ姫の一人称は元々「わたくし」で言葉遣いも丁寧。それを「儂」だとか語尾を「じゃ」とかに変えたのもスーサイドマスター。「かかっ」という笑い方や「ははは」の笑い方もスーサイドマスター由来で、今の忍はスーサイドマスターに染められているのがわかった。キスショットの名前もスーサイドマスターが付けたし。
アセロラ姫には触る事さえ威光のせいでままならいが、例外として彼女を守るためならそれが可能だった。アセロラ姫は自分のせいで自殺した者を食べるために自ら吸血鬼になることを望み、それがアセロラ姫を助けになるというこでスーサイドマスターは牙を美しい肌に裁てることができたのだった。
怪異と人間という異種族間の交流の話で、読んだ印象はハンター×ハンターのメルエムとコムギのエピソードみたいだった。
スーサイドマスターは生きているけど、眷属は主が死ねば人間に戻るから当たり前か。スーサイドマスターはキスショットと再会したがっていたが、今は忍だしもしも再会したら暦もいて新たな物語が作れそうだ。さすがにそこまでスピンオフは広がらない気がするけど。
第零話 かれんオウガ
空手の師匠に免許皆伝または破門された火憐が師匠の勧めで自分を見つめ直すために山にこもって滝行しにいく話だった。
過酷な山に挑み幾度となく命に関わる危機に瀕するが、心配した暦が火憐の影に忍を忍ばせことあるごとに年齢を変えていとこという設定で助けさせるところに面白味がある話だったと思うが、忍のセリフや師匠の思惑はよくわからなかった。
暦らしい残念な落ちは笑えた。
第零話 つばさスリーピング
羽川は扇ちゃんから暦を救うために忍野を見つけ出すが、日本への帰国を嫌がる忍野を動かすために報酬としてここまでの旅の出来事について話す物語だった。
忍野を探して訪れたドイツでドルマツルギーと再会して、仕事を手伝う報酬に忍野の手がかりをドルマツルギーの所属する組織に問い合わせてもらうという約束うということになった。
ドルマツルギーのターゲットは双子の吸血鬼で、羽川が囮となって吸血鬼に捕まりそこをドルマツルギーが奇襲をするという作戦だったが、二人とも捕まってしまい作戦失敗。
双子の吸血鬼も人間を捕まえて食べるのではなく、命を棒倒しの棒に例えて遊ぶために捕まえていた。しかもそれを人間に教えてから遊ぶという鬼畜。
この二人の吸血鬼相手に暦のために相対する羽川が少年漫画的な意味でかっこいい物語だった。傷物語で重症を負ったときに貰ったキスショットの血の力が覚醒アイテムと化していて、瞬間的に怪異の王キスショットの力を発現させた羽川はアニメ化したらどんな姿で描かれるのだろうか。
キスショットの力は双子の吸血鬼を恐れ戦かせるには十分な効果を果たしこうして羽川は助かったのだった。キスショットの力は有限だがまだ何度か使えるらしくて、この後の羽川の旅でも活躍したそうだ。忍野を発見したときにはもう使い果たしていたようだが、これまた物語が作れそうだね。
<物語>シリーズはやっぱり怪異が出てきた方が面白い。オフシリーズは残り「結物語」と「撫物語」の二つが出るそうだが、その後も何かあるのかな。
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