西尾 維新 暁月 あきら
集英社
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球磨川が箱庭学園にやってくる前日譚で水槽学園での出来事を描いたグッドルーザー球磨川の小説版の下巻。タイトルのツークツワンクとはチェス用語らしい。本編に出てきて初めて知った。
サブタイトルは
「須木奈佐木咲のいわれのない身代わり」と
「須木奈佐木咲のやむにやまれぬ大活躍」で、この二本と
「エピローグ」が収録されていた。
上巻で安心院さんからゲームをしかけられた球磨川は須木奈佐木咲の協力もあって勇者の剣を入手した。今回はその続きから物語は始まった。
球磨川のセリフが相変わらずムカつくしウザいけど、咲との会話劇は西尾維新らしくメタ発言とか小説や漫画でしかできない表現がありユニークでニヤニヤしてしまう面白さだった。
安心院ゲームのステージ2の相手は剣道部と居合道部のマネージャーを兼部でやっている
焼石櫛という1年生だった。
櫛は黒髪ロングの可愛い系の端末で、性格も女の子らしさがあって可愛かった。ピンナップのイラストに描かれている中二な剣と刀の二刀流の姿もかっこいいw しかも安心院からのレンタルではない固有の殲滅型のスキルも持っていた。

勇者の剣で球磨川が戦わされるのはこの櫛という少女だったが、櫛は咲の幼馴染みで咲が自ら弱点というほど大切にしている相手であった。安心院さんというやつのの端末だったことやスキルホルダーということはは知らなかったらしいけど。
本編でいうところの名瀬と古賀のような関係で、咲のような人間にもそういった相手がいることにちょっと、本当にちょっとだけなんだけど意外だった。
この関係を安心院さんに利用されて、櫛は『蛮勇の刀』で球磨川と戦うことを命じられ、咲は球磨川と関わることで櫛もこれまでの端末のように酷い目に遭うことを恐れ自分が変装して櫛のふりをして球磨川と戦うことを決意したのだった。
球磨川と咲を対立させることが安心院の狙いだったけど咲もそのことを見抜いていた。
この辺りから全知全能の安心院と水槽学園内という狭い範囲ながら支配者を影から支配してきた黒幕咲の戦いの構図ができ始め、本編を知っている人なら安心院には敵わないとわかっているが、安心院をよく知らない咲が思い通りにさせてたまるかって感じで動く様が面白かった。咲もやり手の腹黒女だから球磨川並に予想がつかなくて、もしかしたらとも思えてきたりもした。
そこで咲がとった作戦は櫛を帰宅させて自分が変装して蛮勇の刀で球磨川に挑み適当に負けて球磨川を次のステージに送るというものだった。
そして蛮勇の刀を持って球磨川の前に飛び出すが、ノータイムで球磨川に正体を見破られ、球磨川にしてみれば変装しているとさえ思われずに咲がやってきたと認識し、咲はずっこけ、その拍子に飛んでいった刀が球磨川の心臓に刺さり球磨川は敗北したwww
球磨川さすがに弱すぎるwww 咲がわざと負けようとしてあげてたのに一瞬でしかも事故で負けるなんてグッドルーザーだなぁww
こうして安心院ゲームは球磨川の敗北で球磨川は水槽学園から追い出されることになってしまった。しかしこんなに急に球磨川がいなくなるのは学園の平和を愛する咲の本意とする所じゃなかったため、いずれは追い出すにしても時期尚早ということで、咲は一人称「俺様」の本性を現し球磨川を追い出さなくてもいいよう安心院ゲームに球磨川の代わりに挑むことにした。安心院もそれを承諾して球磨川のときとは内容を少し変更しつつも端末との対決の段取りをした。
ただの結果論だけど球磨川のために行動を起こすのもなんだか奇妙な状況だと思うw
咲は球磨川に裸エプロンが見えると言って騙して隙を作り『操作令状(エラーメッセージプレート)』を差し込み動きを静止させた。このスキルは一度ささればずっと作用し続けるスキルだから『大嘘憑き』でなかったことにしてもダメらしい。
ステイルの魔女狩りの王(イノケンティウス)に幻想殺しが意味を為さないのと似ている。もっとも『大嘘憑き』でスキルごとなかったことにはできたらしいが、それは気が引けたようだ。球磨川さん優しいな。
球磨川が進めなかったステージ3に挑んだ咲の対戦相手はチェスの名手である
隠蓑既・済の双子の姉妹だった。
種目はチェスだが、変則ルールで盤を二つ使った1対2の咲にとてつもなく不利なルールだった。隠蓑姉妹はチェスを打つ時のプライドがあるとか言ってたけど、これはいいのかと思う…
この対決も咲はチェスでこの姉妹には敵わないと理解していてそれなりの腹黒い作戦を立てていて、球磨川と赤さんのトランプ対決のように読み応えがあった。支配欲を支配するスキル『操作令状』も強いし、操る支配欲をよく観察する咲のやり方も面白かった。しかし咲も球磨川同様エグイことするなぁ…
勝利して次の対戦相手を聞き出すと、それはなんと親友の焼石櫛でその名前を聞くや否や咲は背後から櫛に剣と刀で斬られてしまった。
安心院もひどいものだ…
櫛のスキルは『奇剣の舞(ダンシングデンジャー)』といって「剣に選ばれるスキル」という日常生活では本人すらこんなスキルを持っていることを知らなかったくらい使えないスキルだった。
安心院に教えてもらって初めて認識して、今回本人は咲のためと言いながら蛮勇の刀と勇者の剣の二刀流で咲に襲い掛かってきた。
本来最初の勇者の剣探しで球磨川が真っ当に剣道部や居合道部を探していれば櫛に行きついて、プールで伝説の剣を簡単に手に入れられたそうだ…
球磨川さんこんなところでも気付かないうちに負けていたのかw
戦闘力が無い咲は大ピンチだが、『操作令状』のスキルは応用力があった。隠蓑姉妹を突撃させるのはもちろん天井に刺さったプレートで学校という支配力の強いものを操り天井を崩して櫛を倒したのだった…
櫛は咲を球磨川から解放しようとこうして戦う道を選んだのだと思うけど、それを受け入れず撃退した咲との友情は今後どうなるんだろうね…
こうして咲は安心院ゲームをクリアしたのだった。今回の主役は球磨川ではなく完全に咲だった。
安心院は咲のスキルをあんなスキルと見下しはしたが、咲自身は高く評価していて、『蛮勇の刀』を殺気姫と名付けてプレゼントすると同時に、咲の願いをアイドルになりたいとかそんな無茶なものでも叶えてあげると約束したw
咲が本編で再登場したときアイドルをやっていたのは安心院さんからのご褒美で、殺気姫というのも刀の名前が由来だったんだねw
こうやって本編に繋がるのか。あのとき安心院が咲を見て何か言ってたのも別の意味を感じるな。
しかし今回直接的な球磨川と咲の対決はなかった。この一カ月後に水槽学園が廃校になるそうだが、この利用する側と利用させる側の関係に何が起こるんだろうか…
最後に混沌よりも這い寄るマイナス球磨川禊に対し咲が「混沌すらも操るマイナス須木奈佐木咲」と評されていた。咲はおそらく球磨川に勝るとも劣らない過負荷だったんだろう。
その後、嫌われ者のはずのマイナスの咲がアイドルという超人気者になるんて安心院さんの実力はさすがなものだ。
安心院さんの正体が人外だとは知らないが咲が安心院の挑戦に挑んで、過負荷(マイナス)らしい手を使いながらそれなりの結果を残すという頭脳戦が見物な外伝であった。
少年ジャンプじゃ表現できないような演出もあって良かったし、今後も連載が続くならこんな感じのスピンオフ小説をまた出して欲しい。
会話劇とかせっかく面白いのに、漫画だと絵が単調になりすぎてできないからね… そういった漫画にはできないところも魅力的だった。
個人的な評価★★★★★
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