野村 美月
エンターブレイン
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“文学少女”シリーズの短編集もこれで3巻目だけど、この3巻目はこれまでよりもさらに
恋する挿話集という感じで、皆が皆恋していた。
再び登場した柔道部の牛魔王こと牛園先輩は遠子先輩を諦めきれず再び心葉に相談するが、結末が切なすぎて鈍感な遠子を恨めしく思った。
牛園先輩も琴吹さん同様幸せになってもらいたい。
そして半ばくらいからの毬谷敬一と夕歌の思い出の話からの出所後の毬谷の話もすごく良かった。
本編で夕歌を殺してしまい御用になったかなり経った後の、井上ミウが文学少女やその次の作品を出している時間軸の話だ。
たぶん出所した毬谷が偶然オペラ歌手志望の女子高生と出会い、偽名でレッスンをするという夕歌と臣の関係を思い出すような内容で、直前に夕歌との出会いの話があり、そのコンボでやられた。
それにしても毬谷は年を取っても女子高生にモテるね… けしからん。
もう一つのアフターストーリーは中学校の教師となった竹田千愛の話だった。
仔鹿里佳という少女目線で語られていたが、いつもの仔犬のようなキャラでちゃんと教師をしていたのが驚いた。
未だにフリーターの櫻井流人も大活躍したw
この話は仔鹿が千愛のことをいつもヘラヘラしているという風に見ているところが面白かった。竹田が道化を演じているから仔鹿の言動が笑えた。
仔鹿の話はもう2本収録されていて、二つ目は千愛の心を開いた仔鹿が友達を作ろうとする話だった。
舞台が私立の女子中学校というのがけいおん!みたいでグッとくるね。
堀井というクラスメイトが仔鹿と友達になりたくて、流人と仔鹿のデートをこっそりつけて、ショウウインドウに姿が映って尾行がバレて慌てて逃げていくところが可愛かった。
仔鹿と堀井の青春なイベントもあって、クライマックスに千愛が流人に「あたし……流くんの赤ちゃんが……欲しい」と告白したところは感動した。
ご存じの通り千愛は多くの人が可愛いと思うはずの赤ちゃんに対しそういう感情を持てず、人が亡くなっても悲しいとは思わない体質だ。
それを踏まえて赤ちゃんが欲しいとお願いするところは心に響く。きっと流人もそうだったろう。「うん……」という返事にも愛情と優しさが籠っていた気がした。
最後はこの仔鹿と堀井の物語を千愛目線で描いた話で、小学生になった流人と麻貴先輩の子どもを千愛が初めて見て様々なことを考える話だった。
この話を読んでからまた仔鹿と堀井の話を読むと面白いと思う。
個人的な評価★★★★★
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