野村 美月
エンターブレイン
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毎巻、重厚なストーリーが魅力的だった“文学少女”シリーズもこれで短編も含めて完全完結した。
主人公は心葉君ではなく、17歳の高校生作家
雀宮快斗。17歳にして年収1億を超え、中三のときには心葉のように新人賞特別賞を受賞。書いてる作品はラノベっぽい。
しかし性格にクセがあった。モデルの仕事もしているくらいイケメンで自分に酔いしれていて、ネットで自分の名前を検索し、批判があれば怒るような「俺様」という感じの性格だった。俺だったら友達にもなりたくない。ファンを下々の者と見下し、ファンレターは捨てるようなやつとは…
快斗の4人目の担当編集としてやってきたのが25歳を超えた遠子先輩だった。もう遠子先輩じゃなくて遠子さんと呼ぼうと思う。
快斗はこれまでの担当と揉めたり馬が合わなかったが、遠子さんとだけはうまくいき、うまく丸めこまれていたw 遠子さんのペースは昔と変わらず天然で可愛い。理想の姉のような存在だ。
快斗は小学生の頃イジメにあっていて、そのときいつも慰めてくれた図書館の司書のバイトの“文学少女”が初恋の相手であった。その司書のバイトのお姉さんと遠子さんを重ね合わせ惹かれていった。
しかしこの図書館のバイトの“文学少女”って一瞬遠子さんかと思ったけど、“文学少女”見習いだった彼女を思い出すね。正体は最後まで明かされないけど、この作品をここまで読んできた人ならきっとわかるだろう。
快斗は中三で受賞したため、しばしば比較される井上ミウを敵視していたw 遠子先輩が井上ミウの担当で彼氏とも知らずにw
井上ミウをチビでデブでブサメンと思いこんでいるのが面白かった。
快斗はある日ストーカー被害に遭うが、それを見事“想像”で解決したのはやっぱり遠子さんだった。高校生のとき心葉と活躍したときを思い出す演出だった。
ずっと快斗しか登場しないと思ったら、ライバル作家として大学生の
早川緋砂が登場した。同じく遠子さんの担当で強気なお嬢様という感じだった。
出版社のパーティで初対面したが、お互いがお互いを敵視していた。その様を遠子さんが熱愛と勘違いしていたところはやっぱり変わらない。
二人は会場の外で言い争っていたが、それを写真週刊誌に撮られ美男美女の熱愛発覚みたいになったりもした。
二人はどちらが遠子さんの一番の作家か白黒付けるために短編企画の人気投票で勝負することになった。ライバル対決でバクマンみたいだ。まぁ一番は心葉なんだろうけど、二人はそのことを知らない。あと、その場で快斗は緋砂に遠子さんを好きなことがバレたw
快斗には若さゆえに痛さを感じる。厨二病というより高二病?
短編勝負の結果は井上ミウが1位で、緋砂が2位。快斗はドベw
快斗はネットで集めた売れる要素を無理やり詰め込んだ作品を書いていて意味のわからない作品を作っていた。快斗は根は馬鹿なんだろうw
落ち込んでる快斗の前に現れたのは2位という偉業を成し遂げた緋砂だった。緋砂は快斗を馬鹿にしに来たかと思ったら、泣いていた。
唯一自分の作品を認めてここまで一緒にがんばってきた遠子さんが担当を外れることになったからだそうだ。そんな悲しいことがあって一番にやってくるのが快斗のところって…。緋砂は強気なキャラだけどこんな弱さを見せられればぐっとくるね。
泣いている快斗に編集部に直談判に行けと助言し、緋砂は快斗を付き添いにさっそく向かった。快斗いいとこある。
緋砂は遠子さんから担当交代の意図を聞き、泣きながらその意思を受け取った。緋砂も本当は弱い人なのかもしれない。新しい担当の人もいい人そうで良かった。
一方快斗は遠子さんに彼氏がいることを知ってショックを受けていたw ざまぁw
その彼氏を想像し、年収やルックスは自分よりすぐれているはずと言っていたのが滑稽だね。相手は自分より売れている井上ミウとは知らずにw ちなみに心葉君は彼氏として未だに遠子さんにいじわるをしているらしい。いじわるしている姿が目に浮かぶ。
留年するから学校来いと連絡を受けた快斗は学校に行くことにした。昔、運動音痴でイジメを受けていた快斗だが、学校の球技大会に参加しなければならなくなり、その運動音痴を披露しまたイジメを受けるようになった。今回は犯人不明。
その事件を解決したのはやっぱり遠子さん!学校に潜入するために髪を三つ編みにして女子高生のコスプレをしたw 遠子先輩は三つ編みが似合う。25過ぎても胸は平らだしw
イジメの犯人は悪気もなく、友情の物語だった。あの犯人想像できなかったけど。そして快斗にも友達ができて良かった。
球技大会は快斗が出場した卓球で練習の甲斐もありみごと優勝!それを期に遠子さんに告白しようとするが、遠子さんの左手の薬指には指輪がはめられていたw
ついに遠子先輩は結婚するそうだ!
それにショックを受けて伊豆の旅館に逃げた快斗の気持ちはわからなくもない。これを頼りにがんばってきたんだろうし。
遠子さんは伊豆に追いかけてきて、自分に失恋したとは気付かずそれを小説にしろと言ってきた。さらに何時間も心葉との馴れ初めを語って聞かせて、天然だった。これには快斗に同情する。
無事失恋を小説にした快斗は伊豆からの電車で、帰り遠子さんと一緒に自分の作品を呼んでいる中学生を見つけ感謝をした。最初はファンを蔑ろにしたり、偉そうにする奴だったけど、最後に感謝するように成長した。失恋からも立ち直った。
突然伊豆に行ってしまった快斗を心配して自宅まで様子を見に来てくれる友達もいるし、心配して電話をくれるライバル作家もいる。快斗は遠子さんと出会ってまっとうな人間として色々な物を手に入れた。
最初は金持ちでイケメンだがぼっちで性格最悪でアレだったけど、もう完全に充実してしまったw
快斗はある日昔通っていた図書館に行くと、そこには初恋の相手のバイトのお姉さんが正式に司書として働いていた。
名前はもちろん
日坂さん。“文学少女”見習いだった菜乃だ。
予想通りとは言え、ここでの登場に感動した。昔のような天真爛漫ではなく少し落ち着いたようだが、第三者の目からも遠子先輩と重なるような“文学少女”になったようだね。でもこんな大人に成長していたのは少し意外に思う。
その夜快斗は菜乃を食事に誘って余韻を残しながら終わった。
快斗は菜乃が好きで、その菜乃と重なる遠子さんに恋をしたわけだ。言い方は悪いが遠子さんは菜乃の代わり。だからこれでいいと思う。
これにて“文学少女”シリーズ完結。非常にすばらしい作品だった。高校生の心葉と遠子先輩の物語には毎回ミスリードで騙され、短編ではわき役たちのその後や心情にキュンキュンし、“文学少女”見習いシリーズでは菜乃の成長が面白かった。
↓に書いてる個人的な評価はAmazonの★と同じような感覚で付けてるけど、5★じゃ足りない。
登場人物皆幸せなルートを迎えて、本当に心温まる作品であった。
そしてさっそく5月から野村美月の新作「ヒカル」が刊行されるそうだ。面白そうなら読んでみようと思う。
個人的な評価★★★★★★★
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