五十嵐 藍
角川書店(角川グループパブリッシング) (2012-11-01)
1~3話で構成される短編漫画が計4作収録されていた。
どの作品も純文学のような独特の世界感を持っていて、短いながら不思議な読み応えがあった。
各物語の主人公たちはみんな青春真っただ中の高校生で、思春期特有のやるせない気持ちを具体的な行動に移していて、若さを感じた。どれもしめっぽい雰囲気のほろ苦い青春物語だった。
個別感想
・放課後ロスト家庭に問題があって万引きなどもやっちゃってしまっているクラス委員長と学校サボり気味のクラスメイトの女の友情を描いたちょっぴり百合っぽい物語だった。
一緒に妙な夢を見たり、1日だけ家出して楽しげな日を送ったりはしたが、際立って特別なことはない普通の日常ものだったが、二人の性格が冷めていたため、たまに見せる笑顔からは幸せオーラを感じた。


あとデレる委員長は可愛かった。
・ウォーキング ウィ ズ アフレンド心の隙間を埋めるために何かやらなくちゃと思ったヒロインが主人公を誘って、道に横たわっていたカラスの死体を山に捨てに行くという物語だった。

何かやらなくちゃという年頃の男女が抱く焦りが上手く描かれていたのも良かったし、親しい友達という恋人でもただの友達でもないような微妙な距離感も絶妙で面白かった。
二人の会話だとか、山小屋で薄着なヒロインと一緒にいても何のコメントもない主人公とか、リアルな感じで男の心の声が聞きたくなる内容だった。
カラスを無事埋葬した後は、なぜかヒロインが川で全裸になっていて男も女も羞恥心がなく仲がいいなと思ったw

特にヒロインはなぜこうも羞恥心が無かったのだろう…w
・緑雨彼女はいるけど幼少の頃遊んだ少女のことが忘れられず、その少女そっくりな少女を偶然見かけてしまいさらに気になってしまうというもはがゆい物語だった。
主人公の思い出の中の少女は清楚な子で幼少のころよく遊んだそうだが、出会ったそっくりな少女は暇つぶし怪しいバイトをするほど自分への愛がなくややすれていた。

この主人公の思い出の少女とヒロインは見た目以外は正反対だったが、主人公は交流を深めて行くにつれ脳内妄想が広がり、実際にいない少女に話しかけたりしていて怖かった。

最初まともな人格を持った主人公だったのに、少しずつ幻覚を見ておかしくなっていく様も怖かった。
実際はこの少女が思い出の少女だったが、遊んだのも1日でかつて笑顔でもなかったという、主人公が思い出補正で美化しまくっていたというオチだった。
思い出補正怖いね。理想と現実のギャップは精神的に辛いだろう。
・blue imaginary birdsラストにして少し明るめなエピソードだった。別れた彼氏と寄りを戻すために幸せの青い鳥を捕まえようとする話で、甘酸っぱい方の青春を謳歌していた。

オチも前向きでメッセージ性を感じた。
読み終わって裏表紙を見たら、「曖昧な青春オムニバス」とあって言い得て妙だった。読んでるとこっちもやるせない気持ちになってくるんだよね。
このやるせなさがクセになる作品だった。
個人的な評価★★★★☆
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