うえお 久光
アスキー・メディアワークス (2012-11-27)
最初は大学で習うような量子力学の話で存在密度の話とか、とても中学生がするような話題ではないような会話から始まった。ただ、シュレディンガーの猫くらいなら知っている人も多いと思う。わからなくてもググってみればすぐに見つかりすぐに理解できるし、本編でも優しく解説されている。
ようするに平行世界の説明で、ゆかりの眼は平行世界を見ていて、それはこの世界では人だけど平行世界ではロボットになっている、この世界では左腕だけど平行世界では携帯電話になっているのかもしれないと説明があった。観測して初めて存在が確定するそれがクオリアなどの説明も。

そんな感じでまとめると平行世界がありますよって話だった。と、ここまでがこの物語の前置きのような設定の話でここからが怒涛の展開だった!
まどか☆マギカの人気に火が付いた時に注目された本作品だけど、納得だわ~。ストーリーは当然別物だけど、題材が似ていて、友達のために平行世界でがんばるところが超面白い!
ある日、ゆかりの眼に注目した
ジョウントとという怪しげな組織が
アリスという少女を仕向けて仲間入りをさせようとしてきた。謳い文句は確かに魅力で学の勧めもあってゆかりはジョウントに加入してしまった。

ところがまたある日ゆかりはジョウントから事故で死亡したと宣告され遺体も帰らなかった…
その葬式で学はアリスと眼が合うが、アリスは逃げるように去っていったことから、とりあえず前向きに生きるためにアリスは悪いやつだと決め付け行動を開始した。
左腕の携帯電話は平行世界の自分と通話することが可能で、無限の自分と協力してゆかりの死の真相を探り始めた。

学は歳を重ねて結婚したり、若くして殺される世界もあったけど、ゆかりに関係ない世界は切り捨て様々な選択肢からアリスに繋がる最短の道を選んで前へ進んで行った。学のその狂気なまでの行動力の源は復讐で残酷なこともやったりしていて学さんの執念が怖かった…

また、学さんはそうやって平行世界で殺されたりしても経験や知識を増やしながら復讐の鬼になっていって、その行動から並々でないほほどの怒りと憎しみが伝わってきた。
これだけの世界があるのにゆかりが死なないルートはなかったのだろうか…
そしていくつもの平行世界からアリスへ繋がる道を発見して、さらにそこからアリスに自白させるためにはどうすればいいか、泣き落としや暴力や脅迫やただいたずらに楽しむなど色々試し、最終的にアリスを許すことで敵であるジョウントの情報を手に入れた。
アリスを許せたのも別の世界で残虐なことをしたりしているからというのがやっぱ怖い。
アリスは純粋にゆかりを守ろうとしたけど無力で、ジョウントがゆかりの眼を使い何かをしようとしたところをゆかりは拒否したため、過酷な実験台にされ壊され、最終的に解剖され脳などをホルマリン漬けにされてしまっていた…

この組織は自らに不信を抱いた両親が視察に来る飛行機を無関係な乗客もろとも爆破するくらいヤバイ組織で強大だが、一中学生である学も無限の自分という武器があり確かに真相には近づいていて今のところ勝っているがすごい。
ただしアリスにたどり着くルートは自分の左腕の携帯電話の秘密をジョウントにバラスルートで、これがこの先どう影響するかが気になる。
光は最短距離で目的地にたどり着くことをなぞらえ、学はいくつもの平行世界からその光のようにゆかりの死の真相にたどり着こうとしていた。しかしその最終目的が最上級の苦しみを与えることで光とは真逆の黒い目的で皮肉が効いていた…

でもやっぱりゆかりがジョウントに参加しないルートがなかったのだろうかと疑問に思う。それとは別にゆかりを人間の尊厳を無視して殺した連中を許せないという気持ちがあるからやり直す前に調べているのだろうか。それとも本編開始時の自分が選んだ世界ではゆかりが殺されているためだろうか。
無難に考えると、どの平行世界でもそのルートに入れないからとりあえず死の原因を探っているのだろうか。
ちなみにこの作品の設定だと、体感何百年とかにはならず、その世界の自分が平行世界の自分に電話することで記憶が瞬時に共有されるようだから精神的には持ちそうだ。
ゆかりのためなら文字通り何でもする学が怖くて優しい物語だった。続きが気になって原作を読みたくなる。
個人的な評価★★★★★
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