桜井 慎 川上 真樹
スクウェア・エニックス (2013-12-21)
とうとう最終巻ということで、これまで振りまいてきた謎が一気に片付く壮大なネタバレ巻だった。
ユウカやシロたちを始末するために雪国の街に現れた管理者は、冥途の土産に全てのネタバレをしてくれた。
人類は昔核戦争で滅亡し地上は数千年住めない世界になった。シェルターでなんとか生き延びた人たちも残された食糧は数年分だけでじり貧状態。そこで人類は生身の肉体を捨て、脳を電子化して機械の身体で生きる道を選んだのだった。

そこから人類復活のために機械の身体の管理者たちは研究を重ね、汚染された地上で生存できる生身の肉体を持った人間を作り出すことに成功した。
ところが新たに誕生した人類は再び争いを始め、それを望まなかった管理者たちにより処分。こういう事情も踏まえ争わないよう遺伝子調整されて誕生した人間こそ上村ユウカだった。

ユウカはコッペリオンとかコーディネーターとかそんな存在だったのか…
欲を言えば、これらの情報をユウカたちが自力で少しずつ見つけだして欲しかったな…
突然ボスが現れて全て語ってしまうなんて…
だが、管理者がこんな慢心行為をしていると、一枚岩ではなかった別の管理者が登場してこいつを始末。とりあえずユウカたちは生き残った。
その管理者の名前は「カミムラ ユウカ」で姿もユウカと同一。こいつがユウカのオリジナルで恋人を理不尽な理由で殺した慢心管理者に復讐する機会をずっと伺っていたのだった…

その恋人「ヤシャール」の姿はシロそのもので、殺されたヤシャールをロボットとして蘇らそうとして失敗したのがシロだった。

シロだけが一からプログラミングで作られたロボットで、他のロボットはみんな元人間。記憶を色々いじられているから英子のような存在も出てきていた。
無事復讐を果たしたユウカ管理者はシロを回収して撤収。ユウカたちはその場に取り残されて茫然自失となった。
というネタバレがずっと続き、読みやすかったけど情報量が凄く多かったw
結局ユウカたちは管理者たちの手によって飼われていただけだった感じだね。管理者たちの内話揉めはあったが叛逆行為も想定の範囲内で。
しかも散々弄ばれた挙句に必要なくなったら捨てられる。
肉体を捨ててまで人間を復活させようとしたのに、自分たちは精神的に人間じゃなくなってしまったというね… 虚しいね。
シロを連れ去った管理者と再び相対したユウカは、管理者に従順なヤシャールに殺されそうになった。見た目が大好きなシロだからここまでつくづく救いがない。敵味方含めて登場人物全員に…
ところがいつかのデジャヴのようにユウカの愛の力でヤシャールはシロとしての記憶が復活!再びユウカの味方になってくれた。

こんな奇跡が起き、ヤシャールに説教された管理者は人間らしさを取り戻したのだった。そして最期くらいせめて人間らしく自殺を選んだのだった。意味もなく命を散らすことができるのは人間だけだからと…
再生版ヤシャールは人間らしい感情のランダムさがないから失敗ということだったけど、結局シロはそういうところがあるし人工的に人間を作るという計画は成功していたわけか…
これで管理者たちは滅亡したのかはわからないけど、ユウカたちにとっての平和な日常は戻ってきた。機械の身体の修理にはまだ時間がかかるようだが、食糧問題はなんとかなりそうだし。
そしてシロはヤシャールとしてではなく、シロとしてユウカに告白した。

管理者ユウカを愛するようにプログラミングされているのに、こういう自我があるところがやっぱり希望なんだろう。
ネタバレを知ってみれば、人類がすごく愚かな物語だった。結局自滅エンドだし。
かくして人造人間ユウカとロボットたちの世界が訪れハッピーエンド。繁殖はできないだろうけど。
物語的にはハッピーエンドではあるが、人間の立場からしてみればはたして…って感じ。
この世界に生きた人間は主人公のユウカのみで他は全員ロボットという不気味な世界感と、この世界の管理者の人間の愚かさが面白い物語だった。
個人的な評価★★★★☆
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